なるべく早く公開したかったので訳文のリズム感が所々変な感じになってしまいましたが、ぜひ読んでみてください。原文がポエムの様な表現が多い書き方で少し苦労しましたが、翻訳のスピードが前より上がって我ながら成長したなぁと思っております(^ω^)
ブラジルの干ばつ、降霜に続いてコロンビアでは去年から続く過剰な雨による生産量減少。世界的にアラビカ種コーヒーの量が激減することが予想されます。
今回訳したのはEL COLOMBIANOという私が住んでいるアンティオキア県に本社を置くメディアからの記事です。ローカルの現状がよくわかる記事になっていると思います。
元記事↓
アンティオキア県のコーヒー収穫、天候の影響で40%減か
価格が高騰しているタイミングでの生産量の減少に、南西部は肩を落とす。
「植物は人に話しかけるんだ」、農家のルイス・アルフォンソ・エスコバルはアンデス地区パレスチナに位置する農園で、コーヒーの木を撫でながらそう語る。
「見るだけでこいつらが病気なのか、元気なのか、喉が乾いているのか、喜んでいるのかが分かるんだ。例えばこいつはこう言ってる。お前にやるコーヒーはねぇってな。」
この悲劇はアンティオキア県南西部の何千もの農家が共感するであろう。ちょうど収穫期であるこの時期に10年来の国際価格の高騰を見せているにもかかわらず、この悪天候が生産量を30〜40%減少させる見込みがあると言われているのだ。
この問題はルイス・アルフォンソが保有する80ヘクタールの農地では明らかである。
通常、この山々が織りなす傾斜のレリーフは熟した真っ赤なコーヒーチェリーと見事なコーヒーの花で彩られているはずだが、今年は未熟のチェリーとまだ芽吹いていない花たちで色味がない山々が見て取れる。
EL COLOMBIANOの取材チームはアンデス、ハルディン、シウダボリバル、ベタニアにあるいくつかの農園を回り、この現象がこれらの地域一帯に広がっていることを確認した。(注:これらの地域はアンティオキア南西部の中でも特に有名なコーヒー名産地です)
アンティオキア県のコーヒー生産者委員会の事務局長であるアルバロ・ハラミージョ氏はこれらの現象を確認し、今年の収穫は雨のせいで良いものにはならないだろうと明言した。
同県では通常年に220万袋の収穫があるとされているが、今年は少なくても88万袋の減少が予想されている。損失金額については誰も明言していないが、非公式の情報としていくつかの農家たちは損失は2億8560万ペソ(約824万円)を超えるだろうと話している。
気候変動
アンデス地区の公園でコーヒーカップの周りを飛び回るハチを手で軽く追い払いながら農学者のカルロス・サパタ氏は気候が与える大きさについて説明した。
アンティオキア県南西部では他の地区と違い収穫期が年2回ある。1回目は「ラ・トラビエサ」と呼ばれ3月から5月の間に年間の30%程度の収穫が見込まれる。2回目は大規模な収穫期で9月から11月の間に残り70%の収穫がここで行われる。
コーヒーの木は花を咲かすのに8ヶ月を要し、このプロセスには乾季が不可欠だ。雨の不足がコーヒーの木に水ストレスを与え、花の芽をつける後押しをする。この花はのちに待望のコーヒーチェリーとなるのだ。
しかし、2021年には乾季が足りなかった。「今年はラニーニャ現象(2020年後半から始まっていた)で幕を開けました。これらの雨や雲りが日照時間を減少させ開花パターンを乱しました。」サパタ氏はこう語る。
気象機関IDEAMによると、それに加えてカリブ海諸国を襲った大西洋からの熱帯波の影響で2回目の雨季が前倒しになった様だ。
過剰な雨が地面を湿らせ、それが収穫期の予想を大きく狂わせる原因となった。「完全には喜べませんね。前は80万ペソくらいだった1袋(125kg)あたりの価格が、今年は150万ぺソや170万ペソまで上がっているんですが。」ハラミージョ事務局長は言う。更に「ラ・トラビエサ」では県内の収穫量が5万袋減少したが、これから迎える大規模な収穫期には前向きに考えてもこの5倍の減少が起こるかも知れないと付け加えた。
こうして収入が増えることを期待していたアンティオキ県の7万8千ものコーヒー農家たちはこの気候変動の脅威に苦しんでいる。
サパタ氏の話を聞きながら手の甲でハチを追い払い、ルイス・アルフォンソ氏はこう言った。「このあたりでこんなに雨が降るのは見たことないよ。」
ボーナス?何のこと?
アンティオキア県のコーヒー収穫量の65%は南西部で採れるとされており、大規模な収穫期には地域全体の経済を活性化させる。この時期の大きな社会現象の一つは、コロンビアの別の地域から3万2千人近くものコーヒーピッカーと期間労働者が訪れることだ。
しかし「期間労働者はこの時期にはもうこちらに到着しているはずだが、今年はまだ見ないね。収穫するコーヒーがあまりないから労働者に来ないように電話している人もいるよ。」ルイス・アルフォンソ氏は言う。現在70人ものコーヒーピッカーを雇っているが、彼らのほとんどが地元の人間だ。「収穫量が減るんだったら、この辺りの人だけで全部摘み切っちゃうよ。」
年2回の収穫期だけが生活の頼りである期間労働者への経済的影響は計り知れない。
ヘルマン・オチョア氏。アンデス地区で14人のコーヒーピッカー(半分は地元の人)を雇っている小さな農園の主は、1kg摘むごとにピッカーに平均800ペソ(24円)払っていると言う。もし1日に100kg摘めば8万ペソ(2400円)の収入、1週間(平日のみ)で40万ペソ(12,000円)の収入となる。しかし花が咲かなかった今年はこの収入にたどり着くのは困難だろう。
「市場価格の高騰というのが我々のボーナスとは言い切れないよ。生産量は減っているし、生産コストは上がっているんだ」ヘルマン氏は訴える。コロナウイルスよるパンデミックに加えて、反政府デモで行われた道路封鎖によって、今まで価格が安定していた肥料や農薬の値段が雲の上まで上がったのだ。
「この辺りは経済回復なんてしていないよ。前まで8万3千ペソ(2400円)で売られていた肥料が今は13万5千ペソ(3900円)で売られている。これらは輸入物なんだよ」ヘルマン氏は強調した。
「道が味方してくれないんだよね」ハルディンに位置するアルトデラスフローレスの観光地のコーヒーでできたエキゾチックワインを注ぎながらハイメ・マルティン氏は答える。
ファラジョネスデルシタラの山脈をバックにこう続けた。「メデジンからハルディンまでの道がめちゃくちゃなんだ。観光客はここに着く時いつも不満を漏らすんだよ。穴に落ちたとか車のタイヤが外れたとか。」
警察の交通局によると、豪雨や落石の影響でアマガ地区のエル・ウエセラや、エル・ペドラル、イスパニアで車道の制限が行われているそうだ。(注;アマガ地区はコロンビア第二の都市メデジンからアンティオキア南西部に向かう時必ず通る地区です)
この出来事は観光客への影響だけにとどまらない。南西部との物資やコーヒーの輸送やりとりにも時間がかかってしまっている。
76歳ベテランコーヒー農家であるアルベルト・エチェベリー氏は組合のメンバーにパニックに陥らない様こう諭す。「確かに収穫期は遅れているけれど、期待を失うほどでもない。期間労働者たちを呼ぼう。やることはたくさん出てくるはずだよ。」
父親からコーヒーの愛を受け継いだアルベルト氏は、タパルト川沿いのベタニア地区ラ・プリマベーラに23ヘクタール12万本のコーヒーの木を所有している。
このホテル兼農園のロス・アラジャネスの1番の見所は小さなコーヒー博物館で、アルベルト氏は最愛の娘の様に大切にしている。ここには焙煎機、脱穀機、そして雨をも超える様な最悪な時期を目撃してきたであろう古い絵画たちが展示されている。
だから明言する。「コーヒー農園の中で我々は生まれたんだ。コーヒーに囲まれて生き残ろうではないか。」
–おまけ−
<世代リレーのリスクを知るために>
EL COLOMBIANOが行ったアンティオキア県南西部の調査で、いくつかのコーヒー農家たちは将来の世代交代のリスクについて警鐘を鳴らした。
「若者たちはうんざりしていて、農家にはなりたがらないんだ」アンデス地区のルイス・アルフォンソ氏は言う。ベタニア地区に住む彼の仲間であるアルベルト・エチェベリー氏はこの問題の大半は未成年に労働させることを禁じた法律のせいだろうと語った。
「15年前は労働者の農園での仕事を息子たちにやらせていた。こうやって田舎に愛着を持たせていたんだ。今は十分に労働者がいないから老人を呼ばなければいけない。生産性を考えるとベストな選択ではないけれど。」
ー完ー
いかがでしたか?
最後の労働者の話。少し微妙ですね。確かに田舎に愛着を持つという意味では子供の頃から自然に触れることは大切ですけど、現に労働を強いられてきた人たちは今読み書きすらできずこうして労働者として福利厚生もない日雇いで働いています。コロンビアに限らず世界中で同じ問題を抱えていると思いますが、若者が田舎でも充実した暮らしができる世の中にならない限りベストな答えは出ないのではないかと思いました。
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