今SNSでアメリカをヒッチハイクで横断しようとしている中学生が話題になっている。
しかも裸足らしい。
⚠︎今、彼は保護され帰国の手続きをとっているらしいが、彼のSNSが更新されていないので本当のところは分からない。
この出来事には賛否両論ある。
彼の行動力を讃え応援する人と、危ないから今すぐ帰れという人。
私は後者だ。
彼のアドベンチャーは終わったのでガミガミ言うつもりはないが、彼の行動から思うことがあるので今回ブログとして書いてみることにした。
アメリカンドリーム
アメリカはでかい。本当にでかい。
私が初めてアメリカに行ったのは8歳の頃だったが、あの自由の国独特の雰囲気というかオーラは今でもはっきり覚えている。
さすがアメリカ!と言ったような感動エピソードや、”いい話”がよくSNS上で拡散されているのを見かけるが、それだけがアメリカの顔ではない。
確かに親切な人はたくさんいる。だがその一方で変な人もたくさんいる。
上から下までいろんな人がいるのがアメリカなのだ。
人種差別もたくさんある。アジア人というだけで攻撃する人も少なくない。
優しくて心が広いのがアメリカ人だと思ったら大間違いだ。
彼はツイッターの中で反対する祖母に対して
「テレビで銃乱射とかよく目にするしそれは事実に違いないと思う。だけどおばあちゃんはメディアの情報を鵜呑みにして過剰なイメージを持ってた、そういう人多いんじゃないかな?」
と言っている。
過剰なイメージでもなんでもない。
アメリカが銃社会であり、危険な国であることは事実なのだ。
1992年、ルイジアナ州で日本人の高校生が銃殺された事件があったが、彼は銃を構えた男性の”Freeze(動くな!)”を理解できず撃ち殺された。
そしてその高校生を打った男性は無罪になり、賠償金も支払われていないという。
アメリカとはそういう国なのである。
SNS
彼のヒッチハイクのきっかけになったのはおそらくSNSだろう。
『自分と同世代の子がこんなことをやっている、自分もやってみたい。』
『ただのヒッチハイクならみんなやっているから、アメリカに行こう。』
『ただアメリカを横断するだけじゃつまらないから、裸足になったら面白いんじゃないか。』
想像するにこんな動機だと思う。
彼は現金を大量に持ち歩いていることをツイッターに公表している。(実際に現金の写真も載せている)
また現在地や起こった出来事なんかもリアルタイムでつぶやいている。
これがどんなに危険な行為か、彼は理解していない。
強盗にあった時のために場所を分けて持ち歩いているというが、そんな大金を持ち歩いていることをSNSに公表して、命ごと持って行かれる可能性は考えなかったのか。
SNSの使い方を大人はしっかり指導するべきだと改めて感じた。
法律
アメリカと日本は国が違うので、法律ももちろん違う。
アメリカの中ですら、州によっては法律が異なる。
ヒッチハイクを禁止している州も少なくはない。
彼はそれを「知っている」と言っているが、ヒッチハイクが禁止になる背景を想像できなかったのだろうか。
無料で移動しようとするおおちゃくな人がいるから?違う、ヒッチハイクを装った強盗が連発したからだ。
また、アメリカでは一般的に子どもを一人にすると親は逮捕される。
ちょっと買い物に行くからと、車内に残したりお留守番をさせることはできない。
それは育児放棄や虐待として扱われる。
子どもを危険から守ることは大人の義務なのである。
と、いう点を踏まえて一番言いたいのがこれだ。↓
親、なにしてんの?
いろいろ書いたが彼を責める気はない。まだ子どもだからだ。
いろんなことに興味を持って、日本国外に目を向け、実際に行動に移す。
素晴らしいと思う。ただ実際に行動に移すのは義務教育を終え、自分が責任を持てる年齢になってからにした方が良い。
実際に何かが起こった時、子どもは「自己責任」では済まされない。保護者という存在があるからだ。
何か問題を起こしたり事件に巻き込まれたら、それは保護者が保護できていないせいである。当たり前だ。
「子どもを一人で海外に出すなんて相当勇気がいっただろう。強い親だ。」という意見もあったがとんでもない。
「おばあちゃん家に行くために子どもを一人で新幹線に乗せる」レベルの話ではないのだ。
その子どもの保護者である以上、子どもを守るのが義務ではないのだろうか。
また、彼をSNS上で応援していた大人にも同じことが言える。
彼の身に何かが起こった場合、彼らは責任を取るのだろうか?
きっと知らん顔だろう。所詮他人事だからだ。
ニュースで彼の名前が出るようなことがあっても「頑張って欲しかったのに残念だね」で終わりだろう。
大人なら子どもを危険から守って欲しい。たとえ知らない子だとしても。
今回彼の無謀なチャレンジが終わったというのを耳にした大人が「日本人は出る杭を打つ」云々いっているらしいが、何かあったらどう責任を取るつもりなのか。
応援していた人は一度よく考えてみて欲しい。
たとえ彼がこの無謀なチャレンジを終えて帰国したとしても、残念だがそれはたまたま運がよかった以外のなんでもない。
彼の勇気と頑張りが導いた結果とは到底言えないだろう。
「知ってる・分かってる」と「理解している」
今回この出来事を耳にして、「分かってる」の怖さを改めて感じた。
彼も完全無知のままアメリカに渡ったのではない。
彼なりにいろいろ下調べはしていたようだ。
アメリカでは銃をたくさん持った人がたくさんいること。ヒッチハイクができない州があること。アメリカは危険な国ということ。
そう、彼はいろいろ知っている。ただ、理解ができていない。
実際大人にもそういう人は多いと思うし、私もある意味その中の一人かもしれない。
「海外は日本と違って危ないから気をつけなきゃいけない。」
これは知っているだけで理解しているとは言えない可能性が高い。
理解というのは文章を読むだけでできるものではない。
意味を汲み取り、想像し、自分の中で噛み砕いて初めてできるものである。
そう、彼(またはその親)には想像力も欠けていた。
前述の通り、所持金・顔写真・現在地を公表しる事を安全だと思ったのか。(これはメディアリテラシーの欠如でもある)
銃規制問題、移民問題、貧困問題など、問題で溢れかえっているアメリカに義務教育すら終えていない英語もままならない子どもを一人で送り込むとどうなるのか、想像力があればわかるはずだ。
”15歳の男の子にそこまで考えられるか”と言われるかもしれないが、15年の経験値では難しいだろう。
だから私はこのような無謀なチャレンジには反対なのである。
保護者の話の部分でも書いたが、私は彼を責める気は全くない。
みんながやったことない事を若くしてやり遂げたいという気持ちも分かるし、想像力や理解が足りないのも人生経験が少ないのだから仕方がない。
問題は彼を取り囲む大人たちだ。
幸い彼は真っ当な大人によって保護されたそうだが、本来は親がそれを止めるべきだっただろう。
私は誰かの親ではないが、今回の出来事は一人の大人としていろいろ考えさせられるきっかけとなった。
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