今日は悲しいニュースを一つ紹介します。
6月13日、ラウル・カルバハルというおじいさんがコロナウイルスで亡くなったという報道がされ、多くのコロンビア人が胸を痛めました。
ラウルさん、ある悲しい理由からとても有名なおじいさんだったんです。
ラウルさんの息子さんは元軍隊。2006年、ゲリラ軍を攻撃するミッションの参加中に亡くなりました。
政府から死亡の経緯について説明があったものの、政府は嘘をついていると確信したラウルさんは真実を伝えて欲しいと15年間政府に訴え続けてきたのです。
残念ながら彼の願いは叶う事なく、真実を明らかにしてもらえないまま彼は天国に旅立ってしまいました。
日本ではあまり知られていない出来事ですが、あまりにも悲しい出来事なのでここでシェアさせてください。とても無念です。
政府 VS ゲリラ軍
コロンビア政府と様々な反政府ゲリラ軍は、半世紀以上にわたって内戦状態にありました。
その反政府ゲリラのひとつであるFARCとコロンビア政府は2016年に和平合意をもって戦争を収束させましたが、この戦争には政府側にもFARC側にも真実が語られていない多くの謎が残っており、未だに綺麗さっぱり問題が解決したとは言える様な状態にはありません。
Falsos positivos
その謎の中で代表的な謎の一つは「ファルソス ポジティボス(falsos positivos)」。日本語でいうなら「偽の陽性」になるんでしょうかね。直訳難しい…
これは当時政府とゲリラ軍との戦いの中で、政府が「ほら！沢山の悪いゲリラ軍を殺したぞ！」と成果を見せたいが為に、無実の一般市民を殺害して死体にゲリラ軍の服を着せ、殺したゲリラ兵士の数を水増ししていたという本当に酷い出来事のことを指します。
当時、大統領だったアルバロ・ウリベはこの出来事についてダンマリを決め込んでいます。政府の軍隊によって殺された無実の民間人は2002年から2008年の間に6402人と言われていますが、実際はもっと多いと言われています。
余談ですが、コロンビアで政府批判や政府が嫌いそうな事を言うと「ブーツが逆になって現れるよ」と忠告されます。これは、このfalsos positivosから生まれた表現で、当時殺された無実の一般市民が、ゲリラに見せかけるためのブーツを逆に履かされていた事が由来しています。
ラウルさんの息子は仲間に殺された？
さて、今回のブログで取り上げたラウルさんの息子さんは当時、軍隊の一員としてゲリラ軍と戦っていました。
しかし2006年10月8日、家族に息子さんの死を告げる連絡がはいります。遺族に政府は「ゲリラとの戦いの中で死亡した」と説明しましたが、ラウルさんはそれを信じませんでした。息子さんが亡くなる前の9月20日ラウルさんは彼と電話で4分ほど話したと言います。息子さんの第一子が産まれたとの報告を受け、電話を切る直前息子さんがこう言ったのです。「ねぇ、本当に酷いよ。2人の若者を殺してゲリラに見立てるように命令されたんだけど、僕は殺したくなかった。軍隊辞めるよ、辞めたいんだ」政府は息子さんの遺体をなかなか引き渡さなかったそうですが、ラウルさんは要求を繰り返し、引き取った遺体を検視解剖したところ拷問を受けた痕があったそうです。更に死亡されたとされる場所には他にゲリラの死体など無かったことから、ラウルさんは命令を断った息子が軍隊に殺されたと確信を持ったのです。
それからラウルさんの長い戦いは始まりました。
2011年2月20日朝8時半、首都ボゴタのボリバル広場に一台のトラックが現れました。ラウルさんです。トラックには息子さんの写真と、政府に対するジャスティスを求めるメッセージで埋め尽くされていました。その日からラウルさんはくる日もくる日もビラを配り、息子さんの無念を晴らす為に日々戦っていました。ラウルさんは「本当の事を教えてほしい」一心で声を上げ続けましたが、政府から謝罪はなく再調査が行われることは無かったのです。
彼の訃報にインターネット上では多くの人が悲しみのコメントを残し、翌日ボリバル広場には多くの若者が集まって彼の戦いをここで終わらせない事を誓いました。
本当に悲しい。生前の彼のインタビュー動画を見ると悔しくて悔しくて涙が出てきます。
今の汚職にまみれたコロンビア政府を裏で指揮しているといわれているのが、この当時大統領で一般人を殺すように指示を出していたとも言われているアルバロ・ウリベです。
現在行われている大規模デモでも「ウリベは殺人鬼」という壁画や垂れ幕をよく目にします。言ってしまえば「コロンビアの癌」見たいな人物なんですよ。
ウリベについて、本当に色々な胸糞悪いエピソードがあるのですが、あまりしゃしゃり出るとブーツが逆になって現れることになるのであまりペラペラ喋ることが出来ないのがとても残念です。
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