みなさんはコーヒーの2050年問題についてご存知でしょうか?
簡単に説明すると、気候変動による気温上昇や異常気象によって、2050年にはコーヒーが栽培できる農地が大幅に減少してしまうという問題です。
フェアトレードについては、日本でもよく話題になっていますが、
コーヒーの2050年問題については、あまり関心がもたれていない様に思います。
先日、スペインのメディア『El País』で2050年問題についての記事を見つけました。
とても興味深い内容だったので、ぜひ日本の皆さんに知ってもらいたいと思い、和訳することにしました。
↓元記事
メロドラマからゲノマまで:気候変動に立ち向かうコーヒー
様々な研究で、降水量と気温の変動が作物の半分を消滅させ、何万もの農民を窮地に追いやる可能性があると示唆されている。テクノロジーが解決策だ。
コーヒー農家の日常が舞台となったコロンビアのメロドラマ『Café, con aroma de mujer』は、ひとりの女性の情熱を呼び覚ました。
グラナダ生まれのバルセロナ出身であるインマ・ボレゴは、その雰囲気に魅了された視聴者の一人である。
放送から20年以上たった今、農業工学を学んだ彼女は名高いコーヒーソムリエ(カッパー)であり、ラテンアメリカの焙煎会社の責任者となった。
インマは世界中の豆を知っている。
「コロンビアのコーヒーは700から800のアロマを持つことができます。中米のコーヒーはフルーツ感が強く、パナマのコーヒーは現在世界最高のコーヒーのひとつと言えます。アフリカのコーヒーは基本的にロブスタ種ですが、例外もあります」
インマ・ボレゴは、いくつかの研究が示唆している気候変動が地球上の多くのコーヒー栽培地域に到達することによる影響に、まだ動じたくはない。
しかし、彼女はコーヒーはとても繊細な製品で、ワインの様にそれぞれの収穫は異なるということを誰よりも知っている。
コーヒーの木は、栽培する品種によるが、熱帯気候で適切な降水量と気温、そして高度が必要とされる。
「雨季が早まった。雨が多かった、少なかった。暑かった、そうではなかった。全てが一杯のコーヒーの均一性と質に影響します。そして地質、品種、栽培方法、乾燥方法にまで影響を与えるのです」とインマは語る。
1日何万杯ものコーヒーが消費される世界では、気候変動における生産者と地域社会が直面している課題を消費者が知ることが重要だ。
世界70ヵ国で約1億2千万の人がこの作物に依存している。
この課題を解決しないと、気温の上昇と雨の変化は生産性や品質に影響を与え、更に害虫や疫病の発生を容易にしてしまうという強い証拠がある。
The Climate Institute、World Coffee Research、Centro Internacional de Agricultura Tropical (CIAT) の様な組織や、科学雑誌のPlos Oneらの様々な報告は、それを断言した。
いくつかの組織は「世界のコーヒーの70%を占めるアラビカ種のコーヒーの生産に適した地域は、2050年までに半減するだろう」と警告している。
大半の衝撃は経度が低く、高度が低い土地を直撃するとみられ、ブラジルとベトナムは二大生産国であり、最大の被害を受けるだろう。
コーヒーが誕生したとされるエチオピアのようなその他の国では、3〜5度の気温上昇により今世紀の終わりには栽培に適した土地を40〜60%失う可能性がある。
これらの衝撃は、中米でも深刻になることが予測され、実際にすでにそうなりつつある。
干ばつ、そしてその後の過剰な雨が、去年の収穫真っ只中を直撃した。
「気温は約30度まで上がり、それは木や実の成熟に影響を及ぼします。地域の平均生産量は15%〜35%減少しました。エルサルバドルの歴史上最低な収穫期だったのです。」
生産会社の取締役であるホンデュラス人のルベン・ダリオ・ソルト氏は言う。
これが続けば、World Coffee Research は2050年にはエルサルバドルは栽培に適した土地を50%失う事になると推測する。
同様にホンデュラスは56%、グアテマラでは45%が消滅する。
コーヒーは、農地を捨て別の仕事を探す事を決意した中米の多くの生産者にとっては、もはや儲かる作物ではない。
「低い価格、気候変動、低い生産性、そして現在世界的なパンデミックでコーヒーショップでのコーヒーの消費が落ち込んでいます。この状況は、コーヒーで生活している人達に膨大な社会的圧力がかかっています。」
ソルト氏はホンデュラス、ニカラグア、エルサルバドル、グアテマラにいる約32万人の家族がそこから生計を立てているという事を思い出しながら語る。
コロンビアは最悪なシナリオには陥らないだろう。
この国には54万人の農民と85万ヘクタールの農地が、国を跨ぐ3つの山脈に沿って存在する。
しかしながら、その中のサンタンデール県の北部でベネズエラとの国境近くに位置するコーヒーが自慢の地域であるサンカリクストでは、不安が募る。
彼らの農地は1200m〜1600mの高度で、栽培には最適な土地だ。しかし、今年の収穫は少し悪化している。
「今年の乾季は普段より長く続きました。9月から11月の間、ほとんど雨は降らなかったです。」
この地域のベテラン生産者であるシモン・バジョナはそう嘆いた。
サンカリクストの住民は気候は変わったと言う。
雨は減り、以前は16〜17度だった気温も今では23度まで上がった。
「コーヒーは以前より手がかかるようになりました。常に気にかけていないといけないし、肥料を以前よりも与えなくてはいけないので出費も増えました。雹(ひょう)が降り、サビ病にやられ、ベリーボーラー(豆を食べる害虫)にも苦しみました。私たちは常に作物を守るために戦っており、少しの援助しかありません。コーヒーの価格が今年同様に高く、天気もよければ、コーヒー農家は堂々と生きることができるので、コーヒーも喜んでくれます。」
バジョナは言う。
気候はコロンビア生産者連合会(FNC)にとっても悩みの種だが、彼らは気候変動よりも気候の変動性に目を向けている。
「我々のデータを見てみると、気温と降水量の平均値はここ60年間同じです。しかし、過剰に雨が降るラニーニャ現象と、雨が不足するエルニーニョ現象の頻度と激しさは深刻で、それが作物に影響を与えるため、生産者は警戒しておかなければいけません。」
FNCの環境管理部門の責任者であるラウル・ハイメ・エルナンデス氏は言う。
コロンビア生産者連合会は92年前から安定した柔軟性のある生産システムを持つための戦略を開発してきた。
彼らは、2009年と2011年に起こった洪水とその年の45%の生産量を消滅させたサビ病被害を引き起こしたラニーニャ現象を繰り返してはいけないと言う。
「気候の変動性が加わると、それは更に深刻になるでしょう。幸運なことに、これらの現象のずっと前から、生産者連合会は様々な耐久性のある品種を開発していました。」
エルナンデス氏は語った。
FNCは、高度な研究センター、気候管理施設、早期警告システム、さらに農家にアドバイスするために1500人の技術者を全国に配置している。
彼らは、品質に影響を与えることなくその気候変動から守るための対策をとったと断言する。
「気候が厳しい地域に住んでいるのであれば、木陰を作るために木を植え、浸食防ぐために適切な雑草で地面を守り、焼畑を行わないべきです。」
エルナンデス氏は説明した。
仮に気温が上昇したとすると、ペリーボーラーが危惧され、それは暑い気候の致命的な問題である。
「危険なのは、栽培を高所に移していくことでしょう。生態系が更に壊れやすい高所に向かっていくことになるので、好ましくないですし、良いことではありません。」と強調した。
米州開発銀行(BID)は、コーヒーを含む農業においての気候変動の適応と緩和のため、ラテンアメリカでの一連の戦略をサポートし後押してきた団体のひとつである。
この組織にとって、コーヒー遺伝子組織を認識して品種開発に貢献するなどの、知識生成のサポートをする事が重要になる。
「私たちの多くの融資や技術支援の業務は、特に小規模農家に重点を置いて適応力を高めるように導き、テクノロジーの採用や、農家レベルでの気候変動に対する対策の実践サポートを行なっています。」
BIDの天然資源と気候変動うのスペシャリストであるアナ・リオスは言う。
ルベン・ダリオ・ソルト氏は、コーヒー栽培の構想を伝統的なものから、気候変動の課題に備えた21世期のコーヒー栽培へと移行していくことについて話す。
この企業家の彼にとって、より質の良いコーヒーに賭けることが重要だ。
「私たちがとった対策のひとつは、製品、安全性、バイオセキュリティ、トレーサビリティを向上させる加工技術へ投資し、更に高品質のスペシャルティコーヒーにより良い価格を導入することでした。」と説明する。
「土壌の浸食を防ぐ為に段々畑にし、雨水の浸食を避けて水捌けが良く栄養分を保持する様な農園デザインを採用しましょう。気候変動に対応した品種を探し、早期発見と早期対応の為にも、害虫を葉緑体レベルでモニタリングできるようなスマート農業システムを導入していきましょう」と述べた。
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