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アナフィラキシーショックになって死にかけた話。コロンビアの医療崩壊と人種差別

コロンビア

ある日、いつもの様にコーヒーを摘んでいました。

摘んでいたのは8年くらいカットバックしていないボーボーなロット。

外からみた感じ

もうね、ここまで生え散らかしてると道とかないんですよ。

顔に向かってくる枝を手で押さえながら摘む作業。

目すらしっかりあけてられません。

アルレックスに「もうあと3列くらいで終わるよー」っと言われて、よっしゃーあとちょっと!とはりきっていた矢先…

急に顔中を複数の針で刺されるような痛みに襲われました。

チクチクは顔だけにとどまらず全身にまで広がりはじめ、もがいているとアルレックスの「蜂だ!走れ!!」という声が聞こえました。

走ると言ってもこんな枝が生え茂っている中、お腹にコーヒーを入れるための大きな籠を抱えた状態でうまく逃げれるわけがありません。

ガムシャラに5mくらい走ったところで蜂は攻撃をやめ、巣に帰って行きました。

耳元で響く蜂のジーという羽音もなくなりました。

刺された箇所は全身にわたり、どこを何か所刺されたのか把握できない程。

とにかく一度家に戻ろうと山をのぼっている最中、口と目に違和感を覚えはじめました。

「こんなところも刺されたかな?」と口を触るとカッチカチ!!

虫刺されのように膨らんでいた患部もどんどん腫れ始め、ただ事じゃないことを感じ始ました。

鏡をみたらまるでモンスター!目と口の腫れもちろん、頬もパンパンになり法令線くっきり!

はじめは「自分も16か所刺されたことあるけど大丈夫だったよ」といっていたアルレックスも慌て始め義母に電話。

その間座っているのもしんどくなり床に倒れました。

目がチカチカして前が見えず、サーっという耳鳴りが聞こえ始めました。

血の気がひいてくるのがわかり、腸がゴロゴロしはじめたのを覚えています。

その時『これはアナフィラキシーショックだ!』と気付きました。

蜂毒にアレルギーがあると、刺された人の約10~20%が、全身のじんましんなどの皮膚症状や嘔吐、浮腫、呼吸困難などが起こるアナフィラキシーを引き起こすといわれています。そのうち、数%は意識障害や急な血圧低下によるアナフィラキシーショックを起こすとされ、命に危険がおよぶ確率が高くなります。

https://allergy72.jp/cause/bee/symptom.html
https://allergy72.jp/anaphylaxis/symptom.html

存在は知ってましたけどまさか自分がなるとはねぇ…

なってから気付いてもどうしようもありません。心臓が締め付けられる様な感覚があり息をするのもやっとの状態でした。

アルレックスはその間彼の妹と弟の奥さんに電話。

妹は薬草にとても詳しく、先住民の健康療法をたくさん勉強しています。

彼女からはセイヨウオオバコを噛むように指示されました。

セイヨウオオバコは多分みなさん見たことがあると思います。

その辺に生えてる雑草のイメージでしたが、この葉っぱ只者ではありません。

また歴史的に、傷の治療やヘビによる咬傷の治療にも用いられた[8]。またセイヨウオオバコは、肌荒れ防止効果があるとされるアラントインを含んでおり、同じくアラントインを含むヒレハリソウの製剤(肝臓毒性があると判明した)に代わってセイヨウオオバコの抽出成分が用いられることもある。またセイヨウオオバコは、肝毒性を抑止する効果があるとされるアウクビンも含有している。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%82%A4%E3%83%A8%E3%82%A6%E3%82%AA%E3%82%AA%E3%83%90%E3%82%B3

毒を殺す作用があるんだとか。

一時期ノミが大量発生したときにもこれをすり鉢で潰し、アロエと混ぜて患部のぬったらすぐ治ったんですよね。

 

義兄夫婦は獣医さん。お薬に詳しいです。

彼女からは舌の状態を聞かれ、ロラタジンを2錠飲む様に言われました。

ロラタジンはアレルギーに効く薬です。

口が開かないながらなんとか流し込みしばらくすると目のチカチカが消え少し歩けるように。

その間、義母が近所のおじさんに電話して隣町(車で1時間)の病院で送ってもらうよう頼んでくれました。

 

そこで待ち受けている第一の壁

山!!!!!!

車があるのは山を1km登った地点。そこまで歩かなければなりません。

うちに来たことがある人なら分かると思いますが、私は集落の中でもかなり山の下の方に住んでおり道が細く急の為、大きい車で運転が上手い人しか降りて来れないんです。

彼に長靴を脱がして靴を履かせてもらい、荷造りもしてもらってフラフラになりながらなんとか登り切りました。

おじさんの車に乗り込みいざ出発。

おじさんは車を走らせるや否や爆音でデスぺチョ(コロンビアの音楽のジャンル)をかけはじめ、「爆音の方が痛みが和らぐでしょ?」と。いやいや絶対自分が聞きたいだけですよね。

 

さぁ病院まで待ち受けている壁その二

Pico y placa!!!

コロンビアでは空気汚染が深刻化しており、車のナンバーを用いて交通規制を行っています。

通常ラッシュアワーのみに適応されるピコイプラカ、最近は空気汚染がさらに酷く、規制を強化しています。

該当するナンバーの車やオートバイはその日一日メデジン内を走行できません。

送ってくれたおじさんの車はピコイプラカに引っかかっており街にはいる事ができません。

その為、街の入り口で義母と叔母さんが乗ってきたタクシーとバトンタッチ。

病院へと急ぎます。

運ばれた夜間救急センターでIDを見せ、付き添いに叔母さんが一緒に入ってくれました。

30分くらい待ってもよばれず、痺れを切らせた叔母さんがドアを叩き急いで貰えるようお願いしました。

彼女は元この病院の看護師。勝手をよく分かっています。

看護師に呼ばれ、やっと診察だと思ったら

「名前は?歳は?アレルギーは?手術経験は?」とぶっきらぼうに個人情報?に関する質問のみ。

卵巣嚢腫の手術を経験していたのですが、スペイン語で何ていうかわからない。

「この部分のー…辞書がないのでわからないです…」とゴニョゴニョ言うと看護師ぶちギレ。

「は?????どこなん?手術したん?しゅーじゅーつ!!!」

と怒鳴られる始末wwwwwww

私半泣きwwwwww

とりあえず血圧を測られ「ひっっっっっっっっく!!」と驚くブチギレ看護師。

数値は見てませんが、アナフィラキシーショックなので相当低かったと思います。

その後奥の通路に通されまた待たされます。

叔母さんにこれをつけなさいとマスクを手渡されました。

マスクをしてぐったりしている私。

側から見たら完全に

コロナウイルスの中国人

ひとつ席を開けて座っていた黒人男性が私の顔を20度見くらいしてきます。

電話をしながら何か用があるフリをして席を離れていきました。

夜間にもかかわらず病院は人でいっぱい。

なのに私の周りには誰も座りませんwwwwww

あざっす!広々!!

 

しばらく待つとドクターに呼ばれました。

そのころには身体中に水膨れのような蕁麻疹が広がっており、ドクターもあらまぁと言った感じ。

「日本人なのー?なんでこんな遠くに住んでるのー?」行く先々で聞かれます。

どーでもいいから注射なりなんなりしてくれや。

病院内は人で密集してて暑かったはずですが私は寒くて仕方ありませんでした。

ドクターの問診が終わりさらに奥に通されますがベッドに空きがありません。

すぐにでも横になりたかったですが、急患の71歳のおばあちゃんの横の面会者用のパイプ椅子に座らされました。

叔母さんはもう付き添いはいらないからと外に出されてしまい、一人ぼっちで治療を待ちます。

おばあちゃんに「どうしたのー?蜂?それは大変ねー」と話しかけられ、話している方が楽なので少しお喋りして待ちました。

おばあちゃんの付き添いで来ていた息子さんは終始(||゚Д゚)←こんな顔。

しばらくして入れ替わりで娘さんがきましたが仕切りに私を睨んできます。

何かの会話の中で日本人ということを話すと

「は?中国人じゃないの?!弟からママの横にコロナウイルスの中国人が座ってるって電話かかってきてどうしようかと思ったわよ!向こうでみんな中国人が来たってパニックになってるよ!!」と娘さんwwww

娘: 中国人大っ嫌い!あいつらが何でも食べるせいで糞ウイルスを撒き散らかしやがって。全部クソ中国人のせいだ!動物虐待するクソ野郎どもめ!!!

私: そんなあなたのぽよぽよのお腹にはフライドチキンが詰まってそうですね

娘: あいつらコウモリ食べるんだよ!ウエッ!人のペットの犬まで盗んで食べるんだって!最低!日本は動物食べる?

私: 中国ってすごく大きいんですよ。犬も一部の村だけで…

娘: まじで野蛮!!!クソ中国人!大っ嫌い!ほんと全部あいつらのせいだ!

私:  (全然聞いてねー(´-`))

 

コロンビアはじめ南米では、コロナウイルスをきっかけに中国人がコウモリのスープを食べている画像がものすごく拡散されており、それをきっかけに中国の一部の食文化が歪んで理解されています。

ちなみに南米の人は中国・韓国・日本を、東京・大阪・京都くらいの認識でいる人も多いので、私たちも同じと思われています。

娘: あなたはコロナ持ってる?

私: 2年前(ちょっと盛った)から山奥に住んでるから持ってないよ。

娘: でも本気で持ってない?

ばあ: 2年前はコロナなかったから大丈夫よ。

私鼻をすする

娘: 風邪?コロナ?大丈夫なの?!?!

ばあ: 2年前からここに居たなら大丈夫よ

 

まぁ色々なヘイトを感じているとやっと看護師登場。

1時間は待たされました。

点滴を打たれ、お腹に注射。

やっと元気になれる〜と呑気に写真をとって居たのも束の間…

脳味噌を鷲掴みにされるような頭痛と手の痺れ。

同時に呼吸も乱れはじめ、驚いた娘さんが看護師さんを呼んでくれました。

しばらくして到着した看護師さんは「あー薬が効いてるのよ。落ち着きなさい」と一言だけ残して去っていきました。

その後痛みは引いてきてなんとか落ち着いてきましたが、点滴が終わっても看護師さん来ず。

「あー注射しなくちゃいけなかったんだー」と呑気に戻ってきてお尻に2本注射を打たれました。声が出るほどむっちゃ痛かった。

その後、また点滴。

この点滴がほんと強くて、「え。コロナの中国人だからって殺すつもり???」と本気で思いました。

座ってられなかったので床に座って椅子にもたれていましたが、それでも辛くて病院内の床に倒れ込みました。

おばあちゃんドン引き。

しばらくして警備員がきて(゜ω゜)←こんな顔で私を見下ろしていましたがなにもせず。

コロナウイルスには触りたくないもんねー。

またずいぶん経ったころ看護師さん登場。

「あーさっきの点滴がトラウマになってるのよ。起きなさい。横になってたら頭痛は治らないわよ」と。

喋るにも呂律が回らないので見かねた看護師がリクライニングできるソファに連れて行ってくれました。(とはいっても壊れてて倒れない)

初めからここ連れてこいよ、とこみ上げてくる殺意。

しかしヘロヘロの私は指示に従うしかありません。

廊下を歩くにも突き刺さる視線。

そう、私はコロナウイルス

点滴に眠くなる成分が含まれていたので少し寝ました。

起きたら時計は23時を回っています。

19時から夫と義母と叔母さんはずっと病院の外で立って待ってくれています。

申し訳ないっっっっ!!!!!

点滴も終わったようなので、早く帰らなきゃという一心で急いで看護師を探すために立ち上がって歩き出すと超貧血!

廊下の真ん中で目が回って前が見えなくなってふわーっとしていると誰かの付き添いの女性が「倒れるよ!大丈夫?」と体を支えて一緒に看護師を探してくれました。こんなコロナウイルスに手を差し伸べてくれてありがとう、あなたは天使です。

まぁ看護師さんはシフトが終わったのかいなかったんですけどね。

警備員に聞こうと近づくと無言でわたしがいたソファを指差しました。おい、口あるならしゃべれ。

ドアの前で待っていてくれた義母に「点滴終わったけど看護師いがいない」と告げてソファに戻りました。

コロンビアの医療のゴミさをよくわかっているアルレックス家族。

意地でも患者しか入れない警備員に「おしっこ漏れそうなの!あ!漏れたかも!トイレ貸してください!」と迫真の演技で病院に侵入成功。

フラフラの私に変わってドクターを探してくれ、何とかお会計にこぎ着けました。

さてお会計の時間です。

うわー何万だろー。明日から節約だー。美容院予約もキャンセルだー。とビクビクしていたら…

108000ペソ。2893円。

安。

夜間料金が1132円。

日本でアキレス腱切って時間外外来いったとき1万くらいとられたけどなー。

まぁ対応悪かったからこんなもんか。

病院を出た頃にはアルレックスは山に帰っており、義母と叔母さんと一緒に彼の実家へ。

一泊させてもらいました。

朝、起きてきた義妹に明細書を確認してもらうと、あまり必要ではない薬も入れられていると。

彼女は保険会社で働いていた過去があり、薬には詳しいんです。

「金持ちからはお金を巻き上げ、貧乏人は助けない」というコロンビアの医療スタンスに嫌気がさして退職したんだとか。

コロンビアの医療。受けないに越したことはないですね。

今回はアクシデントでしたが、体調には気をつけようと心に決めた出来事でした。

義母に付き添ってもらい、処方箋の薬を購入。筋肉注射を1本打ちました。

コロンビアでは処方箋がでれば薬局で注射針を買い、知識がある人が在中している薬局で店員さんに打ってもらうのが一般的。

こちらが処方箋で買ったお薬たち。

アレルギー症状の腫れに効くらしい。ほんとかいな(一応全部疑っとく)

 

12時のチバに乗って村に帰ることに。

村についたら帰り道いろんな人に「大丈夫ー?どんな蜂ー?」と質問攻め。

近所の8歳の子供にまで家から顔をだして「もう良くなったの?」と聞かれました。

さすが田舎のコロンビア人。

噂が回るの早すぎ。

そういえば車をしてくれたおじさん。口が軽いので有名なんだって。

 

家に着いたら入り口のパパイアがいい感じに熟れていましたとさ。

 

いやー本気で死ぬかと思いました。

私を刺したのはヨーロッパアシナガバチ。

ここではズボンを脱ぐという意味のquita calzónと呼ばれています。

服の隙間にまで入って攻撃してくることからそういう名前で呼ばれているんだとか。

 

日本では病気なんてほとんどしたことないのに、ここに来て胃炎、膀胱炎、アナフィラキシーと散々病院にお世話になっています。

胃炎のときも3日間絶食状態で山を登って病院にいかなくてはいけなかったので、車の必要性をひしひしと感じております…。

常に蜂の危険と隣り合わせのコーヒー畑。

次刺されたらやばいと思うので、早く車買わなくちゃ。

コロナウイルスの騒ぎが早く収まって以前の様に自由に出入り出来る様になるまで、日本での出稼ぎはお預けです…。

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